秋の洗濯は嫌いじゃない。
真夏のような炎天下でもなく、干す時から生乾きを心配する冬のようなこともない。
春は、なんだか忙しい。やっぱり秋が一番いい。
こんな話から始めておいて、洗濯自体は好きでも嫌いでもない。
好きなところを聞かれるならば、干す時と取り込む時の、肌触りと匂いと答えるだろう。
干す時は、洗濯物の水っぽい冷たさと、湿った洗剤や柔軟剤の香り。
取り込む時は、太陽でカラッとした温かさと、乾いた洗剤や柔軟剤の香りである。
そういえば昔から洗い立てが好きだった。
母が布団カバーを洗濯した日、学校から帰ると外に干されていたカバーの面影はなく。
きちんとカバーがかけられた兄と僕の布団が、いつもよりふっくらして、押し入れの上の段に積まれていた。
それを見つけると、僕は万歳の状態で、上半身だけを直角に曲げ、その布団の間に埋もれていくのである。まだ太陽の温かさを感じるフカフカの布団に包まれると、とても気持ちよかった。
僕の秋の洗濯は、ついでに、きのこを干す。
ジメジメしたところで育つきのこ類は、そのまま調理するとやや水っぽい。軽く干してあげると、急に味や香りが強くなる。
干すことで、きのこが、きのこらしくなるのだ。
今日は、舞茸を干す。朝に適当な大きさに割いてから、ザルに並べて干し、夕方前に取り込む。表面に感じた湿気みたいものがなくなっていればOKである。
これを使って一品作ろう。
玉ねぎをバーベーキューの時のように1㎝ほどの半月切りにして、楊枝を刺す。ベーコンは、ブロックを5㎜角の棒状に切る。なければスライスでも大丈夫だけど、舞茸の味に負けてしまうので、この料理には、厚めのベーコンがよく合う。
フライパンにオリーブオイルを垂らし、ベーコンと玉ねぎ、舞茸を並べて、これまたバーベーキューのように上下を返しながら中火より、やや弱火の火加減でじっくりと焼いていく。
程よく色づいてきたら、塩を振って下味をつける。
フライパンの端に火があたるように位置をずらし砂糖を入れ、グツグツと焦がす。
そこに赤ワインビネガーを入れて、一気に全体を混ぜ、甘酸っぱい湯気と共にソースが出来上がる。
カンパーニュをトーストして、にんにくの切り口を擦り付けて皿にのせ、その上に、たっぷりと具材を乗せて、チーズをすりおろし、黒こしょうをふる。
そうしてワイングラスには、冷えた白を注のだ。
取り込みを待つ、窓の外の洗濯ものを横目にタルティーヌを頬張り、白ワインを鼻に近づける。
洗濯物とは違う秋を香り。良い時間だ。
材料
舞茸 1/2パック
ベーコン 50g(5㎜角の棒状に切る)
玉ねぎ 1/4個(半月切りにして楊枝を刺す)
オリーブオイル 大さじ1
塩 適量
きび砂糖 大さじ1/2
赤ワインビネガー 大さじ2
カンパーニュ 4枚
にんにく 1かけ
ミモレット(チーズ) 適量(パルミジャーノも美味しい)
黒こしょう 少々