RECIPE

梅雨時のジョン。-レシピと雨の日の手紙-#02

先週金曜日から始まりました、ジョンのレシピと小さなコラム「梅雨時のジョン-レシピと雨の日の手紙」の第二回目。今日は「カムジャジョン」のレシピをお届けします。

カムジャとは韓国語でじゃがいものこと。ニラ、キムチ、海鮮のジョンと並んで、韓国ではとてもよく作られるメニューのひとつです。

じゃがいもの皮をむき、すりおろすかミキサーにかけたものを、目の細かいざるや漉し器を使って水を切ります。切った水の部分は上澄みの水分だけを捨て、底にたまった澱粉は生地にまぜ、塩をふります。多めのサラダ油をひいたフライパンで両面カリッと焼く。というのが、一番オーソドックスなカムジャジョンのレシピなのですが、and recipeのカムジャジョンは電子レンジを使います。ホクホクになったジャガイモを輪切りにし、油の代わりにたっぷりのバター。ジョンの衣には粉チーズをミックスして、ちょっと洋風なジョンのできあがり。

マッコリにもちろんぴったりですが、ビールにも白ワインにも合うジョン。週末の晩酌にいかがでしょうか。

バターチーズカムジャジョン

2人分
20
レベル2

材料

  • じゃがいも …… 2個
  • たまご …… 1個
  • 粉チーズ …… 大さじ2
  • 小麦粉 …… 適量
  • 塩 …… 適量
  • バター …… 15g

作り方

じゃがいもの芽をとり、耐熱容器に入れ、分量外の水(大さじ3)の水を入れ、ラップをして、600wの電子レンジで8分加熱する。ボウルにたまごを割り入れ、粉チーズを入れて混ぜる。

じゃがいもを1㎝の輪切りにして、塩をふり、小麦粉、溶き卵の順に付ける。

フライパンにバターを温め、②を入れて両面を中火で焼き、塩をふる。

                                                           

雨の日の手紙 #02

韓国の人たちが雨の日に食べたくなるというジョンとマッコリ。なぜ雨の日にジョンを食べたくなるのだろう。その説を最初に聞いたから、ジョンが好きになったといっても過言ではないくらい、個人的に好きなものがあります。「ジョンを多めの油の中でじっくり揚げ焼きにする時のパチパチ生地が焼けていく音が、窓の外で降っている雨の音に似ているから」なんともロマンチックではないですか。

「앗싸(アッサ)!비가 오니까 오늘은 막걸리랑 감자전.(ピガ オニカ オヌルン マッコリラン カムジャジョン)」やった!雨が降っているから今日はマッコリとカムジャジョン。憂鬱なはずの雨も、雨の日に食べたいメニューがあるだけでおたのしみに変わる。

前日に雨が降ったおかげで空気が澄み、雨雲の合間に茜色の空が見える時間帯に訪れたソウルの三清洞にあるワインバーにて。料理上手な韓国の友人とジョンの話になりました。「雨の音とジョンの焼ける音が似ているから、雨の日にジョンが食べたくなるってすごくいいよね。」そう伝えると、予想外にクールな答えが返ってきました。「私が一番聞いた話は、これ。稼ぐ手段として農業が主流だった時代。雨が降ると畑仕事はできないから、自然と近所の人たちが集まってお酒を飲むことになる。お米から作るマッコリは、農業を営む人たちにとって欠かせない飲み物だった。簡単にできるジョンを焼いてみんなでつつきながら、マッコリを飲んだのが始まり。」

なるほどそこから、雨の日はジョンとマッコリになったという理由はしっくりきます。「あともう一個はね。外が土砂降りの日は夕飯の買い物に出るのがおっくうだから、冷蔵庫にある材料と小麦粉ですぐに作れるメニューとしてジョンは優秀だったっていう話。もちろん、お母さんたちは買い物が面倒だからとは言わないよ。私も実家にいる時、雨の日にジョンがよく出てきたから、頭と体の自然なインプットとしてシンプルに雨の日はジョン、プッチムゲって思ってる。」母たちの合理的な思考。自分も母という立場で考えると、雨の日のお助けメニューだったジョンは、おいしく食べるための工夫を重ねられてきた一品だとも思える。

どちらも現実的だけれど、雨の日に食べたくなる理由には「おいしい」があることも間違いないもんね。ジョンの説明をしてくれる友人の口からは、なんども「그냥(クニャン)=ただ、なんとなく」という単語が繰り返されていました。ロマンチックな理由とは対照的。生活の中に溶け込んでいる、雨の日はジョン。身体的な記憶の延長線上に食べたい理由があることを、少しうらやましく思いました。

写真:狩野智彦
文/レシピ/雨の日の写真:and recipe