RECIPE

梅雨時のジョン。-レシピと雨の日の手紙-#01

今週から毎週金曜日、4回に渡ってジョンのレシピと小さなコラムをお届けしていきます。題して、「梅雨時のジョン-レシピと雨の日の手紙」。

1回目は「コチジョン」のレシピです。コチとは韓国語で串のこと。ソルラルと呼ばれる旧正月や、旧暦の8月15日の前後一日が祝日となる秋夕(チュソク)、祭祀(チェサ)とよばれる法事の際によく作られる、色の鮮やかなジョンです。エリンギ・肉・カニカマ・ねぎなどの食材を串に刺し、長さを揃えて美しく仕上げる。コチジョンはなにより、真心をこめて作るのがご先祖様への感謝のしるしだというセリフが、NETFLIXで配信され先週日曜日に最終回をむかえた『医師・チャジョンスク』の中にありました。

ジョンやプッチムゲについてのおはなしと共にお届けする、雨の日がちょっと楽しくなるレシピ。ぜひ、お試しください。

コチジョン

4人分
20
レベル2

材料

  • スパム …… 40g
  • たくあん …… 40g(かたまり)
  • エリンギ …… 1/2本
  • かにかま …… 2本
  • 青ねぎ …… 2本
  • 小麦粉 …… 適量
  • たまご …… 1個
  • サラダ油 …… 適量
  • 塩 …… 適量

作り方

オススメのタレ、「これぞ万能!チヂミのタレ」のレシピはこちら

材料を5㎝程度の棒状に切り、かにかま、たくあん、青ねぎ、エリンギ、スパムの順に爪楊枝に刺す。

①に小麦粉、溶き卵の順につける。

フライパンでサラダ油を温め、②を入れて、中火で両面を焼き、塩を振る。

ジョンは、たっぷりの油で揚げ焼きにすると美味しく出来上がります!

                                                           

雨の日の手紙 #01

6月頭の大雨で今年は例年より梅雨入りが早かった気がしていましたが、日本気象協会のページを確認すると、関東地方の梅雨入りは6月7日で平年並み。もちろん「この日から梅雨入りです」とはっきり線引きできるものではないと分かっているけれど、いつから梅雨に入ったのか毎年知りたくなってしまうのはなぜなのでしょうか。

じめじめした雨が続くと、なんとなく気分が憂鬱になってしまうから?まだ梅雨に入ったわけじゃない。今日、この雨をやり過ごせば、明日は気持ちの良いお天気になる。毎年、しとしとと梅雨はやってくるのに、わずかな望みを持って「まだ」を確認したくなるのは、大人になったからもしれません。子供の頃はお気に入りの傘と長靴があれば、ぴちぴち、ちゃぷちゃぷと雨の中を歩くのが楽しかった。それほど強くない雨を浴びて、しっとり濡れた紫陽花の葉の上をゆっくり進む、まだ小さな蝸牛。長靴で水たまりに勢いよく飛びこむと、水しぶきと一緒に飛び上がる雨蛙。生温かい風と雨。幼い頃。雨の日に食べたくなるものって、そういえばあったかな。皆さんのご家庭では、雨の日に決まって食べるものはありましたか?

韓国語の勉強を始めてから、韓国の人たちが雨の日に決まって食べたくなるものがあることを知りました。日本では「チヂミ」という名前でおなじみの「ジョン」「プッチムゲ」。チヂミという呼び方は、大邱や慶州を含む北側と釜山や晋州を含む南側に分かれる「慶尚道(キョンサンド)」の方言だと言われていますが、煮詰める・弱火で焼くという意味を持つ動詞「지지다(チヂダ)」を名詞化した「지짐(チヂム)」から来ているのではないかという説を読んで、なるほどと理解しました。

ジョンと一緒に楽しむお酒は、決まってマッコリ。and recipeがソウルを旅した中で、五本の指に入るお気に入りのジョンの専門店「カンガネメットルピンデトッ(강가네맷돌빈대떡)」。京畿中央線の漢南駅にあるこのお店では、やかんにたっぷり入ったマッコリと一緒に、エビや肉、ホバッ(ズッキーニ)、じゃがいもなどのジョンを楽しむことができます。マッコリの入った黄金色のやかんは、表面に滴をまとっていて、中のマッコリがつめたく冷えていることを教えてくれます。玉ねぎがつまみにもなるand recipeのチヂミのタレは、このお店で出てきたものがヒントになっています。そういえば、わいわい大人数で初めてこのお店に行った日も雨が降っていて、順番待ちの列ができていました。

写真:狩野智彦
文/レシピ/イラスト:and recipe